図学研究
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立体の図的表現について
面出 和子
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2001 年 35 巻 Supplement 号 p. 97-102

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抄録

美術系の学生にとって, 図を描くことは, 言葉を使うことと同様に, 自身のイメージを定着させたり他人とのコミュニケーションのための表現手段である。しかし近年, 学生の立体の表現力が減少しているように思われる。彼らは立体や空間の表現を対象の観察によって実現しようとする傾向にあるが, 造形芸術の表現手段として立体や空間を描くには, 法則に従った図的表現法を理解することが重要である。図的表現の原理を学ぶことによって, それを使うかまたはそれを拒否して新たな表現を産みだしていくかを選択することもできるから, 造形の可能性が拡がる。ここでは, 女子美術大学に入学して間もない学生に対して, 高校までの立体表示の学習状況について, また実際に立体をどのように表現するかについて, アンケートを実施した。学習経験では, 透視投影または遠近法をのぞいて, 本来高校までに教えられるべき立体表示に関する用語や方法を教えられていないか, もしくは記憶していないことがわかった。立方体の図表現では透視投象的な図が多く描かれたが, 直方体の図表現では斜投影的な図が多かった。これは透視投影または遠近法についての理解が曖昧なためと思われる。立体や空間の図の表現方法は, 見えたように描くかまたは説明的に判るように描くかで異なる。美術大学では, 目的に応じた図的表現を具体的に教育することが必要である。

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