41 巻 (2007) Supplement1 号 p. 59-64
詩人であり建築家であった立原道造 (1914-1939) が遺した作品の分析を通して, その建築観を検証した.言説や文献に読み取れる立原の建築観は, 同時代に建築を学んだ, 丹下健三 (1913―2005) を中心とする近代日本の建築家らが抱いた都市的な構想とは対比的な, 田園的な建築観であったと考えられる.自らの詩作とも通ずる原風景を描いた立原の〈田園的建築観〉を建築作品からも読み取るべく, 立原が描いた建築図面を可能な限り蒐集し, 特に透視図を対象として図像の分析を行った.立原の〈田園的建築観〉は, 透視図に田園的な背景を描こうとする意識に顕著に表れており, その意識は年代を追うごとに色濃くなる傾向が窺える.立原が抱いた〈田園的建築観〉は, 自らの生きた2つの大戦の間の時代に対するユートピアの表明であったと考えられ, 都市的な建築を担う建築家たちを少なからず感化する建築観であったといえる.