2010 年 47 巻 1 号 p. 17-25
統合失調症患者の在宅医療が進められる中,病院から地域への療養の場を移した患者のQOLの状態を把握することは,現在進められている施策の評価や今後の精神科領域における在宅医療推進の参考になると考えられる。
本研究では,包括的QOL尺度EQ-5Dと,精神疾患特異的尺度QOLIを用い,入院群と地域群のQOLを測定し両者のQOLの差異を明確にし,現在進められている地域医療政策の意義を考察した。調査期間は平成17年10月∼平成18年6月で,クライテリアを満たす外来患者39名,入院患者68名合計107名を対象に面接調査を行った。
調査の結果,入院群に関してはプライバシーを確保することが患者のQOL向上につながるひとつの要因であると考えられた。また,地域群の中でもグループホーム居住者は他の群に比べ,生活の満足度が高く,退院後の受け入れ先として患者にとって良好な環境であることが示唆された。