診療所による各種附帯業務への多角化が進展する中,その多角化類型による損益への影響状況を損益に影響を与えうる他の属性を統制しつつ分析した。その結果,事業利益率と事業赤字回避の両観点において,単に給付の内容や方法を計画支援するだけの多角化と比べて,利用者に具体的な実際の給付をする多くの多角化類型は,診療所を経営する法人全体としての損益状況に悪い影響を与えることが判明した。中でも,介護系と入居系の組合せ多角化及びその組合せに計画支援も含めた3種組合せ多角化や,通所系と入居系の組合せ多角化,4種の組合せ多角化は,利益率でも赤字回避でも状況が特に悪い。ただし資産及び収益の両経営規模の方がこれらの類型の附帯多角化よりも事業利益率により強い影響力を持っていることも判明したほか,本研究に組み込むことのできなかった損益状況に影響を与える変数が他にも多く存在することが示唆された。