本研究の目的は,大規模病院に設置された横断的組織の比較事例分析を通じて,医療現場に適した経営的な方策を決定する問題解決プロセスを検討することにある。2つの急性期総合病院おけるフィールド調査の分析からは,複数の医療従事者から構成される委員会のような横断的組織においては,構成員の専門知識では十分に対応できない知識の補完が,領域横断的な知識の活用を促進して,組織全体に適した問題解決の可能性を高めることが明らかになった。そのことからは,医療現場に対応しながら委員会が有効に機能するためには,高度な人材を単に配置するのではなく,全体的な視野を共有しながら医療現場全体の知識を活用できる運用が重要であることが示される。