民族衛生
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小児性食性異常について
第5報食物と向性及び環境との関係
山内 美子
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1959 年 25 巻 6 号 p. 779-801,A48

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抄録
I1~4報までの不備な点を究明した.調査方法:対象校は東北,四国,中国3地方6県の各山間,都市,沿岸部の小学校40校.対象児は5年生の男女3568名.方法は向性検査と食物の好悪,料理法,攝取回数と家庭の職業,家族構成とSociometric Testである.
II調査成績:信頼度は90%.1)A外向的傾向型を55以上,内向的傾向型を44以下の向性偏差値を比較すると,外向的傾向児が何でもよく食べる傾向である.好食品は肉類,芋類で,嫌食品は人参である.料理法も外向的傾向児はどんな料理でもよく食べ,攝取回数も大である.特に都会児は肉をよく食べる.B向性偏差値72以上,27以下を対照としても上述の如く,外向的傾向児は各種の食品の料理法如可にかかわらず回数多く食べるようである.2)精神,肉体的労働者を問わず外向的傾向児がよく食べる.又多人数家族の外向的傾向児と外向的傾向の長子,仲子は末子,一人つ子よりよく食べる.3)Sociometric Testの結果,不人気型で何でもよく食べる肉体労働者の小児は外向的傾向型が多く,これらの家族構成は片親であつたり,祖父母と同居しており,同胞は女ばかりの中の一人息子とか,男女混合の場合の長男である.
III考察:1)俗説に「外向人は肉食を,内向人は菜食を好む」とあるが,外向人は一般に何でも食べる傾向であり,内向人が菜食を好むとは集計方法を変えても認め難い.Personalityに影響するものは人口密度及び食物の攝取回数,食品の種類等の社会的経済的条件と,親の職業から来る家庭の雰囲気や家族数及び父母,祖父母との同居の有無等の精神環境で,これらが種々様々に錯綜し,その要因複合が影響を与えている.2)偏食について一般には特定の食品を何時でも食べない場合をいい,栄養学者は栄養学的に偏よる場合をいつている.調査,実験の結果,心理的に嫌う面が大なので筆者は嫌食を提唱したい.
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