民族衛生
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有尾人間(geschwanzter Mensch)の知見補遺
柳沢 文憲
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1971 年 37 巻 5 号 p. 177-182

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抄録

 インドネシア南カリマンタンのパリト河上流のダナンパンガン地方のB村(本地方はイスラム信徒)に住む3%才の有尾男児(名N)の観察をおこなつた.その男児の父は45才,農業を営み母は35才で第1子。本児出生のさい母の妊娠時分娩時に異常なく,発育は正常.合併奇形(一)。尾は臀部中央皺裂の上右側Fovea coccygeaより発し,脊椎との連係なく,長さ12cm,基部の直径1CTS,最大径2cm,随意運動はなく,触診では骨,筋肉を認めず脂肪が主体である.外科的な切断は容易であるので申出でた所,手術が全く不可能な精神世界を形成されていた.尾は神からの授かりもので,本児は神童だからである(迷信とみなされよう). 人尾の定義はBartels(1884),分類はまたBartelsの5型が慣用されている.有尾人間の文献を現在まで狩猟し紹介した.また古来カリマンタン(旧ボルネオ)の有尾人間についてはオランダ人により全世界でもっとも多く報告されたところで,その輿実性に対して賛否両論があるが,著者が現地で聞いた印象では,現地人は有尾人間を珍らしくないと見なしている.〔本要旨は第36園日本民族衛生学会総会(昭46)に発表した〕

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