民族衛生
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乳幼児期のう歯予防のための健康教育
野原 三洋子土屋 基粒良 フミ石井 欣一
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1981 年 47 巻 2 号 p. 62-73

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抄録

 わが国におけるう歯の発生は,幼児期より急激な増加を示し,就学期には高い罹患率を示している.めざましい成長発達を示すはずの幼児期におけるう歯の多発進行は,幼児の身心の発達に好ましくない影響を及ぼすことが知られている.従来う蝕の発生には庶糖が極めて深く関与していることが知られ,極端な甘味制限と歯磨きの徹底が唯一の予防法と考えられてきた.Keyes.P.Hは疫学的な観点から,う歯の発生に汚染された口腔内環境,ミュータンス球菌の存在及び庶糖の存在の3つをあげている.現代のわが国の社会情勢の中で,庶糖を摂取せぬための極端な甘味制限は極めて困難で,たとえ実行出来たとしても成長期の幼児の精神衛生上問題が多い.また徹底した歯磨きについてもう歯発生の予防効果が明確でないばかりでなく,かえってエナメル質を傷つける事になる場合も出てくる.う歯発生の予防が,現代の日常生活の中で,できるだけ無理なく自然にできることがのぞまれるわけである.粒良,石井は乳児院における疫学調査より,食生活を中心とした規則正しい生活がう歯発生予防に効果的であるという事を考察した.そこで著者らは,この理論の実証を一般家庭における幼児で行なうべく東京都武蔵野保健所で開催された1974年7月から約3ヶ年の母親学級受購者のうちから希望者をつのり,「むし歯予防のつどい」― 母親講座を月1回年10回開催してきている.対象者は出産確認のできた母子一組を1対象者として330から出発した.そして子供の対象者の生後6ヶ月から就学前まで経年観察をし,現在にいたっている.本研究では1.開催通知連絡とその対応― 出席率― と対象者数の推移,2.毎回のつどいにおける健康教育の方法とその効果についてをつどいのほぼ終了している6ヶ月,12ヶ月,及び18ヶ月のグルーフについて検討し,6ヶ月毎の健康教育が効果的であるという結論の一端を得た.

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