民族衛生
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食物消費におよぼす地域特性と世帯主職業の影響
中島 順一
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1983 年 49 巻 4 号 p. 164-171

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抄録

 食物摂取状況が居住地域や世帯主職業によってどのようになっているかを研究した報告の多くは,これまで個別の食品群で分析されていた.しかし食物摂取状況には補完・競合といわれる相互関係からなる構造が存在するので,これを踏まえたアプローチを,竹内・柳井の方法を利用して行なった.その結果は次のように要約できる. 1)地域特性と世帯主職業に由来する食物摂取の変動要因は,「伝統型対近代型食事」の因子であった.そして近代型は閉鎖的地域,常用勤労者世帯で営まれ,逆に伝統型は閉鎖的地域,日傭労務者世帯,農業世帯で営まれていた.また両要因の個別の効果は,地域特性のほうが世帯主職業より大きいことがわかった. 2)地域特性と世帯主職業の影響を除外して得られる食物消費パターン決定因子は,副食品多食因子と伝統型対近代型食事の因子であった.とくに食物消費パターンの伝統型と近代型を規定する最大の要因は世帯主の年齢であった.ただし,年齢は単に経時的生理的年齢だけでなく,生活歴やその環境を加味したものであるといえよう.

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© 日本民族衛生学会
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