民族衛生
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家庭への加工食品の導入と食事の栄養素構成との関係
磯田 厚子
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1988 年 54 巻 6 号 p. 283-296

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抄録

 いわゆる調理済み食品・半調理済み食品等の加工食品を家庭における食事づくりに日常的に導入することによる食事の栄養素構成上の問題点を明確に把握することを目的とし,首都圏新興住宅地区S市の小学5年生のいる140世帯を対象に,加工食品導入状況と食事内容に関する質問紙を用いた戸別訪問調査を行なった. 日常的な加工食品の導入状況を,材料の複合度に注目して得点化した加工食品導入度を算出して把握し,導入度の「高群」の平日の食事内容からその栄養素構成を検討したところ,導入度の「中」・「低群」に比し,次のような特徴がみられた.(()内は各々「中」・「低群」の数値.) 1.各栄養素等の摂取量の所要量に対する摂取割合は,エネルギー,糖質,脂肪,たん白質は他群と大差がないが,ミネラル,ビタミンの摂取割合は低く,特にカルシウム82.0%(83.3,98.1),ビタミンA91.7%(102.4,133.9),ビタミンB290.9%(104.7,109.8)など顕著に少ない. 2.2栄養素間の比率では,エネルギー比率,脂肪及びたん白質摂取に占める動物性・植物性食品の別等を検討したが,他群と大差はみられない.脂肪エネルギー比が20%未満が18.4%(12.7,9.6)おり若干多い. 3.多栄養素等間のバランスの評価では,「適正域スコア」が10点中6点以下の者が84.2%(60.4,51.6),「栄養素・ミランス域」の低すぎの人が42.1%(23.8,35.5),アンバランス44.7%(41.3,25.8)と多く,nutrition densityに基づく指標INQでも密度のうすいとされるクラス3以下が31.6%(15.9,6.4)と多い.多栄養素等の全体的なバランス状態を示す指標では,問題ありとされる人の割合が一層顕著にみられた.

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© 日本民族衛生学会
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