1989 年 55 巻 6 号 p. 286-293
Naポンプに対する赤血球膜脂質の影響を検討するために,青年期女子を対象に赤血球膜中のコレステロール,燐脂質およびNa-K ATPase,その他の測定を行い,高血圧の家族歴の有無別に比較した.高血圧家族歴(+)の34人と家族歴(-)の37人の比較では,家族歴(+)群に血清コレステロールが有意に高く,早朝1回尿中Na/K比が有意に低かった.高血圧家族歴(+)群には赤血球膜中コレステロールと燐脂質は膜中のNa-KATPase活性と統計的に有意な正相関(それぞれr=0.58,r=0.59;p<0.001)が認められたが,これは家族歴(-)群にはみられなかった.また家族歴(+)群で赤血球膜Na-K ATPaseは尿中Na/K比と有意な正相関(r=0.41;p<0.05)が認められた.これらのことは膜中脂質が膜中Na-K ATPase活性と高血圧の関連に何らかの役割を果たしていることを推測させるものであった.