民族衛生
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日本人胃がん術後患者の摂食行動と筋肉量回復に影響を及ぼす心理社会的,身体的要因
数間 恵子
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1994 年 60 巻 6 号 p. 342-354

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抄録

 日本人胃がん術後患者の順調な栄養状態回復に向けた看護援助に資するために,本研究では退院後の摂食行動を患者のセルフケア行動ととらえ,セルフケア行動の成果が栄養状態の回復に反映すると考えて,栄養状態回復と摂食行動に影響する心理社会的要因ならびに身体的要因を探索することを目的とした.対象は胃がんの手術を受け,再発徴候がなく,術前から退院1年後までを追跡し得た64例の便宜的標本とした.データは調査票を用いた面接,人体計測学的測定および病歴調査によって収集した.栄養状態の回復は,上腕計測によって得た上腕囲および上腕三頭筋部皮下脂肪厚から算出した上腕筋囲(AMC)を筋蛋白量の指標とし,術前術後を通したAMCの回復状態を評価する回復指数(RI)を考案して,その値によって評価した.AMC-RIは退院半年後と1年後ではほとんど差がなかった.術前に比べた退院半年後の摂食量(摂食量比)は,平均73%であった.摂食量比の少ない患者の中には,1日の食事を3回しかとっていないものも認められた.重回帰分析の結果,退院半年後のAMC-RIに影響していた要因は,摂食量比(標準偏回帰係数,以下,bs=0.60)が最も大きく,他に,年齢(bS=-0.23),胃の切除範囲(bs=-0.20),イレウス経験(bs=-0.15),油こい食物が好きな傾向(bs=0.14)があげられた.また,摂食量比に影響していた要因は,食後の休息をとる程度(bs=-0.28),胃切除後合併症の辛さ(bs=-0.24),イレウス経験(bs=-0.24),逃避的対処傾向(bs=-0.18),食欲(bs=0.18)であった.上記の影響要因は,胃がん術後患者に対する食事指導に有用と考えられた.

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© 日本民族衛生学会
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