保健医療社会学論集
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在宅医療における患者・家族・開業医の相互関係分析 : 医療の日常化と自己組織性の視点から
新田 雅子
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2002 年 13 巻 1 号 p. 12-22

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抄録

日本における在宅医療という医療形態の現状とその社会的背景を概観した後、診療所の開業医による訪問診療を利用する在宅高齢患者3事例について、在宅医療の開始からのプロセスに着目して分析する。調査結果から、在宅医療が調査対象となった患者や家族にとってかならずしも自発的・積極的に選び取られたのではなく、他に選択肢がないなかでの不可避な選択であったと捉えられていること、しかしながら「在宅」という場の性質により、医療の抽象性が逓減し、具体的・個別的なライフスタイルが医師への評価基準の要素として設定されること、さらに、多様化する患者のニーズに対応するために開業医同士がローカルなネットワークへと方向付けられることが見出せた。結論として、医師をも「在宅」の当事者の一人として相対化する在宅医療のダイナミズムを、自己組織性の概念を用いて仮説的に提示した。

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© 2002 日本保健医療社会学会
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