2004 年 14 巻 2 号 p. 55-64
近年の医療では、患者のニーズを捉える際には、疾患だけでなく、その「生」の様々な側面を視野に入れなくてはならなくなっている。本稿ではこうした意味でのケアを持続的になすために何が必要かを問うものである。従来は、ケアの担い手に対して技法の拡大や倫理を求める議論が多勢を占めていたが、それだけでは限界を有する。本稿では、A病院・B病院での調査研究から、患者の固有な「生」に目を向けてニーズを了解する際には多大な不確実性がともなわれることから、そうしたニーズ了解を持続的に生み出すためには看護職間の承認し合う関係性が必要になることを明らかにする。今後、医療制度の中でケアを実現していくためには、従来のような技法論・倫理論だけでなく、ケアの担い手間に承認し合う関係性を作り出す方途を探ることが必要になるのではないか。