2005 年 16 巻 1 号 p. 13-24
近年急増しているといわれる「糖尿病」の治療は、将来的な合併症予防を一義的としている点で特徴的である。その治療は日常生活に及ぶため、患者や患者家族の主体的な参加が不可欠とされている。しかし、糖尿病の初期においては自覚症状を伴わず、集団検診などで血糖値の「異常」が発見されても、医療機関での治療を開始し、それを継続することは少ないといわれる。それでは、現在治療を要する症状がほとんどない状況において、人が治療に同意しそれを継続しようと決意するのはどのような場合だろうか。本稿では、自覚症状がないまま糖尿病「患者」というラベルを貼られた人々が、いかに治療を開始/中止するかを、2型糖尿病の教育入院患者を対象としたインタビューをもとに明らかにする。