保健医療社会学論集
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アトピー性皮膚炎の子どもをもつ母親の治療法選択の規定要因と移行メカニズム
大日 義晴
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2008 年 19 巻 1 号 p. 51-63

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抄録

アトピー性皮膚炎の子どもをもつ母親の、ステロイド外用剤使用という、治療法選択を規定する要因と移行メカニズムについて検討を行った。規定要因として、1)効果に対する期待 2)副次的リスク予測 3)代替療法の受容の三変数を取り上げ、理論的仮説を提示した上で、インタビューデータに基づいた現実的状況との適合性を分析した。仮説はほぼ支持されたが、いくつか興味深い事柄を確認できた。まず、ステロイドの効果は短期的であるので依存をコントロールする必要があること、そして、将来発生しうるリスクに対する認識が非常に固定的であることが確かめられた。また、ステロイドの使用を控える場合や代替療法を選択する場合であっても、効果に対する期待を保持することが重要な意味を持つことが確認できた。今日のアトピーを巡る問題状況は、ステロイドのリスクに対する認識の相違に基づいた、医師-患者間のコンフリクトが一因となっていると考えられる。

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© 2008 日本保健医療社会学会
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