2009 年 19 巻 2 号 p. 43-55
本稿では、今から約30年前に健康社会学者を自認するアントノフスキー博士によって提唱された健康生成論とセンスオブコヒアレンスSOC概念に対する筆者の見方を述べた。第1に、健康生成モデルとSOCは保健医療とヒューマンサービス分野にパラダイムシフト的な強いインパクトをもたらした。第2に、それはまた、保健医療社会学とストレス研究や患者研究などに新地平を開くものとなった。第3に、ストレス対処能力概念としてのSOCは、それが様々な汎抵抗資源、とりわけ人間社会関係への依存性の高い概念であるという意味において、社会学的、文化人類学的な概念と言えよう。第4に、SOCスケールの開発はSOC研究に画期をもたらし、その実証研究は増えており、ますます期待されるようになるだろう。