本稿では、日本のいわゆる「脳死・脳死臓器移植」医療政策について若干のバイオポリティカルな検討を試みた。臓器移植法、特にその改正法(2009年)が、かかえる自己決定の問題点について考察した。改正法によって「脳死・臓器移植」医療の問題点が解決したかのように見る向きもあろうが、そうではなく、医療社会学的には、さらに、下記のような問題点の(再)検討が必要であると思われることを指摘した。1)改正臓器移植法は、日弁連の意見書に示唆されたように、患者の自己決定権を侵害していないかどうか;2)このような臓器移植システムの展開は、(脳低温療法などの)脳神経科学等における意識障害の治療法の開発とどのように拮抗するものなのか;3)「脳死」概念の再検討はどのようになされるのか;4)臓器移植に変わる治療法(人工臓器、再生医療、バチスタ手術など)は、どのように再評価すべきなのか;そして、5)本邦の移植医療のアセスメントや社会学的意味付けはどうなのか。