保健医療社会学論集
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『逝かない身体』とその周辺(<特集1>医療・経済・社会)
川口 有美子
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2011 年 22 巻 1 号 p. 26-40

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抄録

本稿は、2009年12月に上梓した『逝かない身体』の執筆動機となった2004年以降の尊厳死・安楽死にまつわる人々の言動や事件を紹介するとともに、「無駄な延命」とされてきた植物状態の人の生を肯定する。なかでも、この間に超重度コミュニケーション障害(TLS)のALS患者からの「呼吸器の取り外し」が検討されてきたことは執筆の主要な動機になっている。ALS患者の一部に発現するTLSという状態は、その人の生を肯定できない他者や社会が作る「読みとってもらえない」状況と考える。この状況は、患者の医療や介護の担当者を孤独にせず、より充実した環境と資源で支えることで変えることができ、患者の社会貢献度と尊厳が増すことを主張する。

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© 2011 日本保健医療社会学会
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