2011 年 22 巻 1 号 p. 95-108
本研究は、認知症の高齢者を「ケアするもの」の語りから、一個の<世界>を持った「ケアされるもの」と、また異なる一個の<世界>を持った「ケアするもの」が、ケアという場面で出会い、そのぶつかりの中で、ケアがどのように進行するのかを明らかにし、それによって、一個の<世界>を持った「ケアされるもの」を支援するとは、どのようなことかについてのある一面を考察しようとするものである。本稿の事例において見られる「ケアするもの」と「ケアされるもの」は、それぞれが別々の<世界>を持った主体であり、その両者が、ケアという場で出会うことで、両者の<世界>が一致しない「ピンチ」が発生する場合がある。しかし、その時に、そのような不一致が新たなケアを生み出すための「チャンス」として捉えられ、両者が共有可能な<世界>が再構成される場合があることが事例から示唆された。