2012 年 23 巻 1 号 p. 16-27
本稿は、戦前・戦後日本社会において社会学はいかなる歴史的・時代的変容のもとで編成されてきたのかをごく簡単に概括しながら、「大学の大衆化」「大学院の大衆化」という歴史的・時代的文脈のもとで、現在の学会の論文審査体制や研究倫理体制はいかに編成されてきたのかを記述する。その上で、そうした学会の組織化・制度化の中でいかにして社会学の論文を書くのか、そのような「戦後日本型大衆教育社会」において社会学者として被る社会的・制度的な制約を踏まえながら自らが生きる<社会>で社会学の論文を書くことを自覚することの大切さを主張する。単に若手研究者の「生存戦略」「キャリアパス形成支援」といったお話よりもはるかに大切なのは、私たちはいかなる<社会>の中でどのように社会学するかという決定的に大きな問いを抱きつづけること、その幾重にも折り重なる苦悩を生きることである。