本稿の目的は、戦後日本における歯科衛生士の専門職化運動を、医療専門職システムにおける専門職プロジェクトとして把握し、その変容過程と特徴を明らかにすることにある。歯科衛生士団体の機関誌、歯科学雑誌、国会会議録、および歯科衛生士を対象としたインタビュー調査記録の分析から、歯科衛生士と業務の協働・分業を行う歯科医師、歯科技工士、(准)看護婦、歯科助手の支配管轄権をめぐる境界線の変容過程を詳細に検討した。その結果、専門職間の縦のヒエラルキーのみならず、縦横の競合関係が歯科衛生士の専門職化プロジェクトの方向性を決定するとともに、国家政策やジェンダー関係といった外的要因が日本における歯科衛生士の専門職化の道程を規定してきたことが明らかになった。