2013 年 24 巻 1 号 p. 1-10
患者側弁護士(以下、弁護士)に対する相反する見方がある。医師側が、「弁護士は訴訟を促進している」と考える一方で、原告側は、「弁護士はなかなか訴訟を引き受けてくれない」と思っている。本研究では、この点に着目し、提訴手続期間(相談から提訴に至る)における弁護士の機能を、弁護士のインタビュー調査を基に作成した逐語録を中心に検討した。結果として、提訴手続期間に「事案のスクリーニング」「調査」「医療側との交渉」の三つのレベルを設けることで、弁護士は提訴抑制機能を果たしていた。三つのレベルのなかでも「事案のスクリーニング」は、提訴への大きな関門になっていた。提訴抑制機能の効果として、敗訴回避効果、経済的効果、問題解決効果の三つを明らかにした。また、提訴抑制機能の効果の受益者が、患者側(相談者)だけでなく、医師(相手側)と弁護士本人であることを示した。