現在、わが国が直面している医療・保健の最大のテーマが、少子高齢化である。この問題に対応するべく、医療の構造改革が進んでいる。在宅医療の推進は、改革の要と言える。しかし、在宅医療の必要性は、高齢者のみでなく、がんの緩和医療でも、小児医療でも、同時に高まっている。高齢者では、これから到来する多死社会を乗り切るために、緩和医療では、がん患者のほとんどが一般病棟で亡くなっている現状から、より多くの患者に緩和医療を提供するために、小児医療では、医療技術の急速な進歩によって生まれた医療機器と医療ケアに依存して生活する子どもたちの急増に対応するためにである。医療の構造改革の最大の壁は、高度経済成長期に病床数を増やし、病院に医療資源を集中させてきた、現在のわが国の医療構造そのものにある。在宅医療推進は、その壁を克服すると同時に医療と生活、病院と地域の再統合という医療のパラダイムシフトをもたらす。