2016 年 27 巻 1 号 p. 83-93
本稿の目的は、ハンセン病者の経験を共有し継承するための道を検討することである。そのために、地理的にも政策的にも極限的な場所にあるカラウパパと大島青松園におけるダーク・ツーリズムに着目する。ダーク・ツーリズムは、隔離された「死」を現前化させる。それは、ハンセン病者との対面的な相互行為の場の形成だけでなく、ダーク・ツーリズムそれ自体の枠を超えた新たなコミュニケーションの形成に寄与するという可能性ももつ。そして、より重要なことは、ダーク・ツーリズムを「死」と「生」の視座から考察し、われわれがハンセン病者の存在の排除と類型化に抗するようになることである。