保健医療社会学論集
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研究ノート
過食・嘔吐という「危期」を乗り越える——当事者が語る「罪悪感」を手がかりとして——
宮下 阿子
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2018 年 29 巻 1 号 p. 61-71

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抄録

本稿では、摂食障害を生きる当事者にとって、罪悪感に苛まれながらも過食・嘔吐を繰り返してしまうという問題経験が、どのような意味をもって生きられているのか、またそこに賭けられているものは何であるのかを考察する。医療の文脈では、過食・嘔吐にともなう罪悪感はもっぱら回復を妨げるものとして捉えられ、その経験的な意味は十分に検討されてこなかった。しかし本稿の事例では、本人が医学的な解釈を受け止める一方で、罪悪感を引き受けながら過食・嘔吐と上手く付き合っていこうとする姿が見られた。これについて本稿では、「疾患」ではなく「危期」という概念を導入し、罪悪感を引き受けることがどのような意味を持ちうるのかを明らかにする。そこからは、回復を望みながらも、まずは今をどう乗り切るのかが切実な問題として浮上する中で、自らの問題経験を「道徳的な問い」として引き受け、危期を主体的に乗り越えようとする当事者の姿が示された。

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© 2018 日本保健医療社会学会
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