遺伝性疾患の患者・血縁者が、家族内で遺伝学的リスクに関する情報を共有すること、すなわち「リスク告知」は、疾病予防が治療戦略の中心となる「リスクの医学」の時代において、遺伝学的検査の受検の選択、疾患の早期発見や予防行動の上で重要とされ、医療者から推奨される傾向が強まっている。海外を中心とする先行研究は、個別疾患ごとに、伝えるかどうかの意思決定、告知の戦略、告知後の遺伝学的検査受検へのはたらきかけという3つの局面を明らかにしてきたものの、体系的な研究枠組みは十分蓄積されていない状況にある。本研究では、国内の遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の患者・家族のインタビュー調査、ならびに複数の遺伝性疾患を対象とする既存研究の知見を参照することで、告知者の視点を中心とする「リスク告知」のプロセスの枠組みを示し、疾患横断的な「リスク告知」の研究を展開させるプラットフォームを構築することを試みる。