2013 年 73 巻 1 号 p. 1-7
塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor,以下bFGF)は創傷治癒を促進し迅速に表皮化させるだけでなく,瘢痕拘縮を予防することが報告されている1)一方,人工真皮は,コラーゲンスポンジが真皮組織構築の足場として血管内皮細胞や線維芽細胞を誘導し,真皮様組織を形成するため,しばしば皮膚欠損創に用いられる.今回われわれは実際の臨床例において,皮膚欠損創に人工真皮を貼付しbFGF製剤を噴霧した肉芽組織を採取後,病理組織学的検討を行い,bFGFの瘢痕拘縮の抑制効果について検討した.皮膚欠損創10例に対して,デブリードマン後,人工真皮を貼付し,同一創内でbFGF製剤併用群と非併用群にわけ,約2週間後に母床の肉芽組織を採取し,病理組織学的検討を行った.それぞれの母床組織においてα-Smooth Muscle Actin(以下α-SMA)による免疫染色を施行し,単位面積あたりのα-SMA陽性細胞数を算出し,統計学的に検討した.2群間の比較を行ったところ,併用群においてα-SMA陽性細胞数は減少していた(p=0.0236).人工真皮とbFGFを併用することで創傷治癒過程における瘢痕拘縮の予防につながる可能性が示唆された.