昭和学士会雑誌
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症例報告
強直性脊椎炎に合併した腰椎椎体骨折を保存的に治療しえた1例
丸山 博史神 與市白旗 敏之古森 哲藤田 昌頼石田 育男稲垣 克記
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2013 年 73 巻 1 号 p. 62-66

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抄録

強直性脊椎炎に合併した圧迫骨折に対し,hip spica式の体幹コルセットを用いて骨癒合を得た症例を経験した.症例は58歳,男性.仕事中に出現した腰痛により体動困難となった.他院に搬送されるも,脊椎病的骨折の疑いで当科に紹介された.脊椎病的骨折は否定され,強直性脊椎炎に合併した椎体骨折と診断された.下肢に筋力低下を認めたため,後方固定術を検討したが,心疾患のため心機能が低下しており,保存的治療を選択した.治療は,Hip spica式の体幹コルセットを着用させ,6週間床上安静とし,10週間後より座位保持訓練と歩行訓練を開始した.これにより,骨癒合が得られ,コルセット着用後16週間で独歩にて退院した.強直性脊椎炎は椎体骨折を合併すると,骨折部に応力が集中し,偽関節や,四肢の遅発性麻痺を生じる可能性が高い.このうち筋力低下を併う場合は,外科的治療の適応である.本症例では,骨折部より遠位椎体は一塊となっているため,股関節の動きにより骨折部が不安定になっていた.これに対し自験例は,Hip spica式の体幹コルセットの装着により,体幹部とともに股関節の可動域を制限できたため,保存療法のみで良好な骨癒合が得られたと考えた.

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© 2013 昭和大学学士会
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