昭和学士会雑誌
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原著
東京都における糖尿病治療薬の処方動向
―アンケート調査をふまえて―
小橋 京子平野 勉
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2014 年 74 巻 6 号 p. 661-668

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抄録

糖尿病治療の根幹は食事,運動療法であるが, 目標の血糖コントロールが達成されない場合には薬物療法が開始される.欧米ではビグアナイド(以下BG)薬が第1選択薬となっているが,日本では特に治療ガイドラインがないため第1選択薬は実地診療医に一任されている.このような現状の中,われわれは東京都内における医師を対象に,症例に則した糖尿病治療薬の処方動向を専門医,一般医に分けて調査した.2013年1月~6月にかけて,東京都内で勤務する医師に対して以下の1)~3)の項目についてアンケート調査を行った.1)現在の糖尿病診療の状態:診療人数と治療内容の割合,食事・運動療法中の2型糖尿病患者さんに対して薬物投与開始を考えるHbA1c(NGSP値)の目安について.2)患者の状況別治療方法の選択; 4症例に対しての第1,第2,第3選択薬について<症例1>56歳,女性,BMI 23.9kg/m2,HbA1c 7.2%<症例2>56歳男性,BMI 26.0 kg/m2,HbA1c 7.2%<症例3>56歳,男性,BMI 22.9kg/m2,HbA1c 8.5%<症例4>67歳男性,BMI 23.9kg/m2,HbA1c 8.5%.3)DPP-4阻害薬の処方状況について; DPP-4阻害薬処方後にHbA1c悪化症例に対する対処方法について.各質問項目について専門医,一般医に分けて解析した.回答した1086名の(回収率85.5%)医師の内訳は専門医290名,一般医796名であった.アンケート1)専門医でインスリン治療の使用率が高かった.薬物治療を開始するHbA1cの目安は専門医,一般医とも7%であった.アンケート2)BMI<25m2/kg未満の症例で血糖コントロールが比較的良好例に対する第1選択は専門医ではBG薬,一般医ではDPP-4阻害薬であった.少量のスルホニル尿素(以下SU)薬は,一般医,専門医とも第3選択薬であった.症例3,4のHbA1c 8%以上のコントロール不良糖尿病例に関しては専門医,一般医ともDPP-4阻害薬が第1選択薬であった.少量のSU薬に関しては,専門医では血糖コントロール不良例に対しても選択しない傾向が判明した.アンケート3)第1選択は「食事・運動療法を再徹底する」が最も多く,第2選択としては「BG薬を追加する」が多かった.専門医では非肥満例に関してもBG薬の処方が選択される傾向があり,少量のSU薬は血糖コントロール不良例に対しても選択順位が低下することが判明した.DPP-4阻害薬の処方選択順位は様々な症例に対して高まっており,その傾向は専門医より一般医に強く認められた.

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