昭和学士会雑誌
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原著
若年者ステロイド性大腿骨頭壊死に対する大腿骨頭高度後方回転骨切り術
―術後早期の壊死域修復に対するMRIからの検討―
石川 翼渥美 敬玉置 聡中西 亮介渡辺 実小林 愛宙田邊 智絵柁原 俊久
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2015 年 75 巻 1 号 p. 78-85

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抄録

ステロイド性大腿骨頭壊死症は,青壮年期に両側に発症することが多く,壊死域が広い場合は圧潰が早期に生じ,進行性であり治療に難渋する.活動性の高い若年者に対して行われる人工股関節置換術は,長期経過では再置換の可能性が危惧されるため,関節温存治療が望むべき治療法である.渥美らは広範囲大腿骨頭壊死に対する大腿骨頭高度後方回転骨切り術後,単純X線にて術後回転により内側に移動した圧潰壊死域の再球形化が生じることを明らかにし,有効な関節温存手術であることを報告した.そこでわれわれは若年者ステロイド性広範囲大腿骨頭壊死症に対する大腿骨頭高度後方回転骨切り術後の壊死域修復をMRIから検討したので報告する.対象は大腿骨頭高度後方回転骨切り術を行ったステロイド性広範囲壊死例19関節(19例)であり,男性8例,女性11例,手術時平均年齢は33.8歳である.ステロイド投与の基礎疾患はSystemic lupus erythematosus 7例,Glomerulonephritis 4例,Mixed connective tissue disease 3例,Lymphatic leukemia 2例,Interstitial pneumonia1 1例,Malignant lymphoma 1例,Facial nerve palsy 1例であった.厚生労省班会議改訂分類における術前の病型はType C-1:8関節,Type C-2:11関節であり,全例広範囲壊死域を有していた.病期はStage 3A:11関節,Stage 3B:8関節であった.後方回転角度は平均119.5°(110°~135°),追加した内反角度は平均20°(15°~25°)であった.MRI (脂肪抑制T2強調冠状断像)を術前,術後1か月,術後6か月,術後1年で撮像し,冠状断像の骨頭前方から後方までのスライスをイメージソフト(Pixs2000-Pro)に取り込み,各スライスにおける壊死面積を測定し,積分することで体積(mm3)を算出した.術前壊死域体積に対する術後壊死域体積の割合(%)で修復を評価した.年代別における壊死域体積割合(%)は,術後1年で20歳代(n=9):30.3%,30歳代(n=6):50.8%,40歳代(n=4):59.5%と各年代において継時的に壊死域体積の減少を認め,年代が若いほど壊死域修復が良好である傾向を認めた.病期別における壊死域体積割合の比較では,術後1年ではStage 3A (n=11):47.2%,Stage 3B (n=8):37.6%であり,骨頭圧潰が進行している症例においても壊死域修復は良好である傾向を認めた.術後ステロイド継続投与有無別における壊死域体積割合の比較では,術後1年でステロイド継続投与あり(n=8):53.5%,ステロイド継続投与なし(n=11):35.5%であり術後ステロイド継続投与を行わない症例では壊死域修復が良好である傾向を認めた(P<0.05).大腿骨頭高度後方回転骨切り術は壊死域が内側から後内側の非荷重部に移動し,生存域が前方に位置することから壊死域が修復しやすい環境にあると考えた.術後ステロイドを継続投与された症例は有意に壊死域の修復が劣っていることからステロイド性大腿骨頭壊死症に対する回転骨切り術の成績は術後ステロイド継続の有無により左右される可能性が示唆された.ステロイド性広範囲壊死症に対する高度後方回転骨切術術後早期に壊死域修復が生じることが示された.

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