昭和学士会雑誌
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症例報告
腹腔鏡が損傷部位同定に有用であった腹部打撲による小腸穿孔の1例
藤政 浩一朗村上 雅彦渡辺 誠野垣 航二五藤 哲草野 智一松田 和広北島 徹也大野 浩平内田 茉莉依山崎 公靖藤森 聰大塚 耕司青木 武士加藤 貴史
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2015 年 75 巻 4 号 p. 486-489

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抄録

症例は57歳男性.通勤ラッシュの駅構内で駆け込み乗車をしようとしたところ,ホームの防護柵で左上腹部を打撲.直後より,心窩部の激痛を自覚し,近医に救急搬送された.心窩部に圧痛と腹膜刺激症状,腹部CTで肝表面に遊離ガスを認め,穿孔性腹膜炎の診断で当科紹介となった.受傷5時間後に小腸穿孔を強く疑い,腹腔鏡下に腹腔内観察したところ,中等量の汚染腹水を左横隔膜下に認めた.胃,十二指腸に異常所見は認めなかったが,上部小腸周囲に白苔を伴う炎症所見が観察されたため,上腹部正中に4cmの小切開を追加した.創外で小腸を検索したところ,Treitz靭帯より約35cm肛門側の小腸に約1.5cm×1.0cmの穿孔部を1か所認めた.穿孔部位をトリミング後に縫合閉鎖し,手術終了とした.その他,明らかな臓器損傷部位は認めなかった.術後経過良好で,第11病日に退院となった.鈍的腹部外傷による小腸穿孔は術前診断・穿孔部位同定に難渋することが多い.循環動態が安定していれば腹腔鏡下手術は低侵襲下に診断,治療が施行できるため有用であると考えられた.

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© 2015 昭和大学学士会
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