昭和学士会雑誌
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原著
強力集束超音波 (HIFU) による胎児鏡下気管閉塞術のバルーン解除の可能性
大澤 俊亮佐藤 智夫山下 紘正望月 剛北角 権太郎千葉 敏雄土岐 彰
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2016 年 76 巻 2 号 p. 193-198

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抄録

近年,先天性横隔膜ヘルニアに対して,胎児鏡下気管閉塞術 (Fetal Endoscopic Tracheal Occlusion;FETO) の有用性が報告されている.着脱式バルーンによって気管を閉塞することで,胎児肺・気道に肺胞液が貯留し,肺の成長を促進できるとされる.一方,バルーンによるこの閉塞の解除法に関してはこれまでさまざまな手技が試行されているものの,母児への負担が大きい再度の胎児鏡手術による気管内バルーンの摘出などが主体となるため,より低侵襲的で簡便な手法の開発が望まれている.本研究では,バルーンによる気管閉塞解除の手段として,強力集束超音波 (High Intensity Focused Ultrasound ; HIFU) に着目し,その可能性につき検討を行った.脱気水で満たした水槽内にシリコンチューブを固定し,ナノ液滴0.5~1.0mlを注入した着脱式バルーンをシリコンチューブ内に留置し,チューブを閉塞した.次にバルーンの後壁を焦点として,超音波ガイド下にHIFUを3kW/cm2の音響強度で2秒間照射した.バルーンが破裂した時点でHIFU照射を終了し,バルーンおよびシリコンチューブを観察した.シリコンチューブ内に留置したバルーンは4例全例で破裂した.また,シリコンチューブ前壁には熱変性を認めた.胎児鏡下気管閉塞術の有用性が報告されてきているが,その閉塞解除の手段とその時期についてはいまだ議論が乏しい.HIFUを気管閉塞解除に応用できれば,将来より低侵襲に気管閉塞解除を行うことが可能となり,従来特定の医療施設でのみ実施可能であった先天性横隔膜ヘルニアに対するより安全なFETOがさらに多くの施設で導入可能となる.今後,動物実験を加えることにより,本治療の技術精度・安全性を高め,同時にHIFUの新たな臨床応用を目指していく.

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© 2016 昭和大学学士会
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