昭和学士会雑誌
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原著
骨粗鬆症治療に関する意識調査
―仮想症例を用いた,アンケート結果―
永井 隆士黒田 拓馬坂本 和歌子石川 紘司阪本 桂造稲垣 克記
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2016 年 76 巻 4 号 p. 469-479

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抄録

骨粗鬆症治療薬は,PTH製剤,抗RANKL製剤,ビスホスホネート製剤,SERM製剤などが主体である.どの治療薬を選択するかは主治医の判断に委ねられている.骨折の危険性が高い骨粗鬆症の症例では治療方法の選択に大差はないと考えられるが,骨粗鬆症の程度が中等度から軽度の場合,治療選択に違いが見られる可能性がある.そこで本研究では,症例を提示して近隣の開業医,勤務医を対象に骨粗鬆症の診断,治療選択の意識調査を行い,円滑な医療連携のために,骨粗鬆症診療の情報を共有することを目的に調査を行った.当院設置地区および隣接地区である東京都品川区,目黒区,大田区,世田谷区における開業医と勤務医 (標榜科:内科,外科,整形外科,婦人科,麻酔科,脳外科) を対象に,仮想症例を提示して,無記名式のアンケートを行い骨粗鬆症の診断,治療選択の意識調査を行った.症例の特徴は,1.70代前半,2.骨密度軽度低下,3.骨質劣化,4.臨床症状なし,5.母親の大腿骨頸部骨折の既往歴あり,であった.330人中143人から回答を得た (回収率43.3%).アンケート対象者が提示された検査項目リスト以外に考える追加の画像検査としては,胸腰椎のレントゲン撮影 (53%),腰椎または大腿骨の骨密度測定 (31%) が多かった.血液尿検査では,これ以上の検査は行わないと回答した医師は皆無であり,何かしらの検査の追加があった.骨代謝マーカーを測定すると回答した割合は73%と多く,内訳はTRACP-5b (48%) や尿中NTX (41%),P1NP (27%) の順で多かった.治療方法では,運動療法や食事療法が30~40%を占め,薬物治療ではビスホスホネート製剤 (75%) とビタミンD3製剤 (67%) であった.治療選択に当たり参考となる知識の根拠は,治療経験 (43%),骨粗鬆症診療ガイドライン (41%),学会・講演会 (24%) の順であった.著者の提示した検査項目以外に追加する検査項目として,骨代謝マーカーの測定と回答した割合が73%と多く,骨密度と併せて診断を行っていることが分かった.骨粗鬆症診断ガイドラインや治療経験を参考にして,本症例でも保存療法も含め全員が骨粗鬆症治療を開始したいと考えていた.

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© 2016 昭和大学学士会
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