昭和学士会雑誌
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原著
繰り返す凍結および解凍が長期間保存された造血細胞移植用臍帯血の品質に与える影響の検討
外山 大輔山本 将平小金澤 征也金子 綾太秋山 康介池田 裕一磯山 恵一
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2016 年 76 巻 5 号 p. 607-614

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抄録

非血縁臍帯血移植は近年移植数が増加しているが,その欠点としてドナーリンパ球輸注などの細胞治療を行えないことがある.以上より,臍帯血の一部からT細胞を増幅培養して,輸注する細胞治療が考案されてきた.通常,移植時に解凍した臍帯血の一部を用いるが,培養開始時期を選択できないといった問題がある.いったん解凍した臍帯血の一部を再凍結してこれらに用いることが可能であれば使用時期を容易に選択できる.本研究では,長期間保存された移植用臍帯血を用いて,繰り返しの凍結および解凍が造血能などの品質に与える影響について検討した.10年以上長期保存された移植用臍帯血で品質の検討後に,その残検体を再凍結し6年以上保存された18検体を対象とした.初回凍結前(PF),初回解凍後(PT1)および再解凍後(PT2)の総細胞数,CD34陽性(CD34+)細胞数,顆粒球マクロファージ由来コロニー数(CFU-GM),生細胞率,CD34陽性かつCD38陰性(CD34+/CD38-)細胞の割合,CD34陽性かつCXCR4陽性(CD34+/CXCR4+)細胞の割合を測定した.総細胞数,CD34+細胞数,CFU-GM数はPT1で各々5.47±2.14×108個,0.66±0.33×106個,1.96±1.32×106個,PT2で各々5.31±2.12×108個,0.60±0.34×106個,1.27±0.52×106個(p=0.45,p=0.33,p=0.69)でありPT2はPT1と比較していずれも有意差を認めなかった.生細胞率,CD34+/CD38-細胞率,CD34+/CXCR4+細胞率はPT1で各々83.7±9.45%,9.11±4.13%,81.65±10.82%,PT2で各々64.45±8.0%,10.22±3.76%,76.79±8.36%(p<0.01,p=0.16,p=0.09)であり,PT2の生細胞率はPT1と比較して有意に低値であった.今回の検討から生細胞率を除いて,繰り返す凍結および解凍が長期保存された移植用臍帯血の品質に与える影響がないことが示唆された.生細胞率が有意に減少していた理由として,再凍結までの時間が長かったことが原因として考えられた.移植時に解凍した臍帯血の一部を速やかに再凍結することで,生細胞率の低下を防ぐことが可能であれば,再凍結された移植用臍帯血を用いた細胞治療が可能であると考えられた.

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© 2016 昭和大学学士会
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