昭和学士会雑誌
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症例報告
「6歯以上の非症候性部分性無歯症」の一矯正治療例
丹澤 豪近藤 裕敏槇 宏太郎
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2016 年 76 巻 5 号 p. 641-648

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抄録

近年,永久歯の先天欠如は増加傾向にあると考えられている.先天欠如の原因に定説はないが,その多くは系統発生学的退化現象であるとされている.今回われわれは,全身疾患を伴わず,上顎両側第一小臼歯,両側第二小臼歯および下顎両側第二小臼歯の計6歯が先天欠如している症例,いわゆる「6歯以上の非症候性部分性無歯症」に遭遇した.多数歯の先天欠如は,歯の位置異常,過蓋咬合,空隙歯列などの歯列に対する影響のみならず顎顔面形態にも影響を及ぼすなど多くの問題点を含んでいる.このような症例に対し歯科矯正治療を行う際,長距離の歯の移動に伴う歯根や歯周組織への負担を避けるために補綴処置が必要となる場合もある.しかし,本症例では補綴処置を行わずに歯科矯正治療のみで良好な咬合を得ることができた.「6歯以上の非症候性部分性無歯症」の歯科矯正治療は現在,保険適用されており,患者の治療の選択肢が増えることによって,補綴処置の回避や軽減につながるものと考えられた.

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© 2016 昭和大学学士会
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