2017 年 77 巻 3 号 p. 331-341
ヒト乳がん細胞株MDA-MB-231を,チューブリン阻害剤であるpaclitaxel,eribulin,および白金製剤cisplatinに曝露し,サイクリン依存性キナーゼ阻害タンパク質であるp21の発現抑制におけるmicroRNA(miR)の役割を検討した.MDA-MB-231細胞を,cancer stem-like cell(CSC)のマーカーであるCD44の発現の有無によってCD44発現細胞(CD44+)と非発現細胞(CD44-)に分離した.MDA-MB-231細胞をcisplatinに曝露した後分離したCD44+におけるp21発現は,CD44-よりも有意に低下しており,CD44+ではCD44-よりも細胞周期が進行していることが示唆された.MDA-MB-231細胞をcisplatinに曝露した後分離したCD44+におけるグルタチオン酸化率はCD44-より有意に低下しており,cisplatinのCD44+に対する細胞障害性は低下していることが示唆された.さらにMDA-MB-231細胞をcisplatinに曝露した後分離したCD44+におけるcaspase-3の活性はCD44-よりも有意に低下しており,CD44+ではcisplatinによって誘導されるアポトーシスが抑制されていることが示唆された.MDA-MB-231細胞をmiR-17ならびにmiR-93に対する阻害剤で処理した後,分離したCD44+におけるp21を測定すると,上記2つのmicroRNA阻害剤でp21の発現が有意に増加したことから,miR-17ならびにmiR-93はp21発現を抑制していることが示唆された.以上より,cisplatinに対するMDA-MB-231細胞の抗がん剤抵抗性にCD44が関与すること,またmiR-17ならびにmiR-93は薬剤抵抗性の要因となっているp21発現を抑制していることが示唆された.