2018 年 78 巻 2 号 p. 149-155
小児気管支喘息の管理は,ステロイド吸入薬などが普及した結果,劇的に改善した.このため喘息治療において,薬物療法におけるアドヒアランスの向上は,新たな重要な臨床課題となっている.今回われわれは喘息指導を通してアドヒアランスの向上を目指し,その評価に新規アドヒアランス評価質問票Pediatric Asthma Adherence Questionnaire(以後PAAQ)を用いて検証を行った.対象は2016年に品川区または江戸川区主催の喘息健康教室に参加した児と保護者とし,喘息指導介入を行った.健康教室および介入対象および方法,回数は,品川区水泳教室(保護者介入,講義形式,1回),品川区夏季健康教室(患児介入,講義形式,5回)および江戸川区水泳教室(介入なし)とした.解析は主要評価項目として,指導の前後のPAAQの変化とし,ほか合計12項目のアドヒアランス調査項目を用いた.解析対象は品川区水泳教室9名,品川区夏季健康教室14名,江戸川区水泳教室15名であり,各群の患者背景に有意差は認めなかった.PAAQは3群において介入前後の有意な変化は認めなかった.また他の質問項目においては喘息の悪化傾向を示すものがあった.喘息指導介入によってPAAQに変化は認めなかった.今後効率的にアドヒアランスを向上に導く指導方法の開発が期待される.