昭和学士会雑誌
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症例報告
外傷の既往を持つ上顎両側中切歯の便宜抜歯を行ったAngle Ⅱ級1類症例
間所 睦槇 宏太郎
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2018 年 78 巻 4 号 p. 383-392

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抄録

近年,矯正治療の多様化に伴い小臼歯以外を抜歯するunusual extraction症例が増加している.本症例では外傷の既往を持った上顎中切歯を便宜抜歯して矯正治療を行ったので,その概要を報告する.患者は初診時年齢24歳5か月の男性,叢生を伴うAngle Ⅱ級1類症例で,上顎左側中切歯に完全脱臼の既往を持っていた.外傷後の経過は良好と思われたが,歯髄は失活しており,矯正移動のリスクと治療後の長期的なリスクを考慮し,上顎両側中切歯は便宜抜歯し矯正治療を行うこととした.矯正治療後は,コンポジットレジンの直接充填法により,上顎前歯の形態修正を行った.本症例を通して,歯科材料や技術の発展とともに患者が求める審美的要求を詳細に共有することで,より低侵襲な矯正治療が可能となることが示唆された.

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