昭和学士会雑誌
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症例報告
6歳で初回手術を行った両側母指多指症の1例
宮部 真以古賀 康史張 卓山内 日香里住永 莉華子門松 香一
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2019 年 79 巻 3 号 p. 397-402

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抄録

本邦においては,母指多指症は通常1歳前後で初回手術を行う.今回われわれは6歳で初回手術を行った両側中手骨型母指多指症という稀な症例を経験したので報告する.症例は6歳,男児.生下時より両側母指多指症(Wassel分類:右Ⅵ型,左Ⅴ型)を認めていたが1か月健診以降医療機関の受診はなく,5歳8か月時に当科初診し6歳時に形成術を行った.右側は低形成である尺側指を切除した.術前よりみられていた指節間関節の尺側偏位が残存しており機能的および整容的両面で問題が存在するため,今後骨切りによる指軸矯正を行うか検討中である.左側は尺側指を温存し,橈側指から短母指外転筋を移行した.左側の術後経過は良好である.乳幼児期での治療に比べ,手術手技や周術期の評価は容易であったが,患児の運動発達や心理社会的側面を考慮し,適切な時期に手術を行えるように啓蒙が必要であると考えられた症例であった.

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