昭和学士会雑誌
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原著
健常成人の走行における足部内関節運動への足部接地パターンと速度の関与
藤原 浩樹中村 大介仲保 徹関屋 曻
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2019 年 79 巻 4 号 p. 459-472

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抄録

足部の詳細な動きを捉える方法として足部マルチセグメントモデルが近年,多くの研究で報告されており,その中でも,Leardiniらが報告したモデルは再現性や妥当性の点において優れている.また,走行時の足部接地パターンも注目されているが,足部マルチセグメントモデルで研究した報告は未だ少なく,Leardiniモデルを用いて足部接地パターンの影響を調べた先行研究でも速度の影響を考慮に入れていない.そこで,本研究はLeardiniモデルを使用して足部をマルチセグメントとして扱い,健常成人男女を対象として足部接地パターンと走行速度が足部のキネマティクスへ与える影響を明らかにすることを目的とした.被験者は健常成人男女計10名とし,床反力計を用いた床反力計測と三次元動作解析装置を用いた下肢の標点計測を行った.運動課題は,踵からの接地と前足部からの接地の2条件の走行で,目標速度を110m/分と140m/分に設定し,計4条件の課題を計測した.その結果,底背屈において,後足部関節(モデルBp)と中足部関節(モデルBm)の初期接地(IC)時の角度,モデルBpと前足部関節(モデルBa)の足尖離地(TO)時の角度,モデルBpとBmの最大背屈角度,全モデルの最大底屈と運動角度範囲に接地パターンの主効果が認められ,モデルBpのIC時の角度,モデルBmのTO時角度および最大背屈角度とタイミング,モデルBpとBmの最大底屈角度に速度の主効果が認められた.内外返しにおいて,モデルBpとBaのIC時の角度・モデルBmのTO時の角度,モデルBpの最大内返しと運動角度範囲,モデルBaの最大外返し角度,モデルBmの最大外返しのタイミングに接地パターンの主効果が認められ,モデルBaのIC時の角度,モデルBpのTO時の角度,モデルBpとBmの最大外返し角度に速度の主効果が認められた.内外転において,全モデルのIC時の角度,モデルBpとBmの最大内転角度,モデルBaの最大外転と運動角度範囲,モデルBpとBaの最大内転のタイミング,モデルBmとBaの最大外転のタイミングに接地パターンの主効果が認められ,モデルBpのTO時の角度,モデルBpとBmの最大外転角度,モデルBpの運動角度範囲,モデルBmの最大内転のタイミングに速度の主効果が認められた.足部接地パターンの影響は,モデルBpの全運動方向,モデルBmの底背屈と内外転,およびモデルBaの内外返しと内外転で,ICから立脚初期において強く現れたが,立脚初期以降の角度の経時的推移のパターンには顕著な影響は認められなかった.速度上昇に伴い,モデルBpのIC時,TO時,およびモデルBaのIC時に関節運動が大きくなることが確認され,モデルBmにおいて立脚中期に関節運動が大きくなる結果となった.これらの結果はいくつかの新しい知見を示すとともに先行研究を支持するものであり,走行時の足部運動の評価において有益な情報になるものと考えられる.

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© 2019 昭和大学学士会
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