昭和学士会雑誌
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短報
明治期の薬剤師専門職化形成過程を探る1つの手掛かりとしての『薬剤誌』第46号(明治26年4月6日発行)について
小口 江美子
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2020 年 79 巻 6 号 p. 778-788

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抄録

明治時代に新たに資格化された薬剤師の初期の専門職化形成過程を探るために,1889(明治22)年に創刊され,その「発刊の趣旨」に「医薬分業を推し進めるために」と謳われている雑誌『薬剤誌』を第1号から調査した.調査研究を進めていく中で,先行研究やWeb情報では,これまで存在しないとされていた,1893年出版の『薬剤誌』を入手した.この研究は,先行研究やその他の歴史的研究への貢献の一環として導入することを目的としている.1893年に出版された『薬剤誌』第46号の表紙,目次,奥付は,1892年に出版された第45号とほぼ同じであった.本書の本文の頁数は21頁で,それまでに発行された第1号から第45号までと比べて半分以下に減り,それにもかかわらず広告の頁は多かった.『薬剤誌』第46号の最終刊行に関する記事はないが,出版の遅れ,本文の頁数の少なさ,広告数の多さ,1892年12月の薬剤師会の参加人数の少なさ等から推測すると,東京薬剤師会の財政上の理由から継続は中止されたことが示唆された.休刊の理由は,『薬剤誌』に関する先行研究の中でも示唆されてはいたが,1893年に出版された『薬剤誌』第46号のこのたびの調査により,雑誌『薬剤誌』は財政上の理由から休刊になった可能性がより確実になった.

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