昭和学士会雑誌
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原著
昭和大学藤が丘病院における顔面骨骨折の骨折部位と原因と年齢の統計的検討
清水 崇史赤嶺 周亮田中 隆太郎門松 香一
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2020 年 80 巻 1 号 p. 51-57

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抄録

さまざまな受傷原因がある顔面外傷は他の部位の外傷より多いという報告が見られる.道路交通法の改正や自動車の性能の向上,スポーツ人口の増加やスポーツの多様化・高度化などさまざまな社会的要因の関連が報告されている.顔面外傷の中でも顔面骨骨折の統計学的検討については,多数の報告があるが,そのほとんどが受傷原因・受傷部位,小児・若年者・高齢者,男女比などの項目の中から一部の項目を限定しての報告が多く,各年齢層のまとまった報告は少ない.今回,昭和大学藤が丘病院において撮像された全てのCT画像(2014年1月から2019年6月30日まで)およびカルテから顔面骨骨折の有無を調査し,該当患者群で受傷時年齢,性別,受傷部位,受傷原因について後ろ向きに検討した.調査対象の受傷患者数は609名で,骨折総数は755骨折であった.全区間における男女比は2.7:1(443:166)であった.81歳〜85歳の年齢層以外では,男性の受傷者が多かった.対象年齢は,1〜92歳で,年齢は38.5±23.8歳,中央値は29.5歳で,分散は565であった.11歳〜25歳の患者が257名と全体の42.2%を占めた.1例の年齢不明患者がいたため,解析から除外した.全年齢層では骨折部位は鼻骨289件(38.3%)で最も多く,以下,眼窩骨179件(23.7%),頰骨150件(19.9%),下顎骨66件(8.7%),上顎骨43件(5.7%)の順であった.全年齢層における受傷原因のうちわけは転倒転落219件(36.0%),スポーツ外傷195件(32.0%),交通外傷94件(15.4%),打撲49件(8.0%),暴力44件(7.2%),不明・その他7件(1.1%)であった.各年齢層の受傷部位・受傷原因について統計学的処理を行い,有意差を検定した(95%信頼区間).統計学的に受傷部位として有意に少なかったのは,0〜19歳の頰骨骨折,10〜19歳の下顎骨折,40〜69歳の鼻骨骨折,多かったのは90歳以上の頰骨骨折,50〜59歳の上顎骨骨折,30〜39歳の下顎骨骨折,0〜19歳の鼻骨骨折であった.発症原因として有意に少ないのは10〜29歳の転倒転落,80〜89歳における交通外傷,0〜9歳,30〜89歳におけるスポーツ外傷で,有意に多いのは50〜89歳における転倒転落,50〜59歳における交通外傷,0〜9歳,30〜39歳における打撲,30〜39歳における第3者行為であった.若年者ではスポーツ外傷,鼻骨骨折が多く諸家の報告と一致していた.しかし自験例では,眼窩骨折が多く,また下顎骨骨折が少なかったことは諸家の報告とは異なる結果となった.スポーツ外傷が受傷原因となる年齢層では鼻骨骨折も多く見られたが,その他の年齢層では転倒転落が最も多かった.打撲の原因・下顎骨骨折の種類・骨折における手術の有無は細分化することの必要性が示唆された.

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