昭和学士会雑誌
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原著
看護系大学で精神看護学を担当する若手教員の教育実践力支援に関する検討
〜若手教員の教育活動における困難と求めている支援に焦点を当てて〜
大河内 敦子榊 惠子三村 洋美
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2022 年 82 巻 3 号 p. 205-224

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抄録

本研究は,看護系大学で精神看護学を担当する若手教員の教育活動における困難と求めている支援を調査し,教育実践力向上のための支援を検討することを目的に実施した.若手教員11名(うち4名は1年目教員)に半構造化インタビューを実施し,テーマ中心の質的逐語録分析を行った.その結果,「教育活動における困難」について7カテゴリーが抽出された.それらは《看護系大学教育に関する知識》および《学生支援のための基本的な力》といった看護系大学教員として基盤的な困難さと言えるものと,《治療環境の特殊性》,《倫理的ジレンマ》,《精神看護学の立ち位置》そして《精神看護学担当教員としての表現力》,《わかりにくさに向き合い続ける力》といった精神看護学教育実践の中で積んでいく困難さとして生じていることが考えられた.また,「求めている支援」については4カテゴリーが抽出され,《大学での教育方法の伝授》という看護系大学教員として基盤的な困難さに対応するものと,《メンター,ロールモデルの存在》,《ピアとしてつながる場》に加え《領域内の確かな意思疎通》といった精神看護学を担当する中で若手教員が教育者としての中心目的に当たるもの,すなわち自らの精神看護学教育の目的を言語化して表現し専門性に対する決意を自覚することへの支援が必要であると考えられた.本研究を通して,精神看護学を担当する若手教員には看護系大学教員に求められる教育実践力を獲得する困難に加え,独特な困難があることが明らかとなった.支援としては,若手教員が取り組む以下の項目に対し,周囲の人たちが寛容な態度で伴走するような関わりのあり方が明らかになった.ひとつ目に精神看護学を取り巻くさまざまな事象について倫理的省察を止めないこと,次いでわかりづらいことを容易に単純化しようとせず熟考する力と表現の仕方を育むこと,さらに自らの教育の目的を言語化することの3つである.

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