抄録
呼気中一酸化窒素濃度(Fractional exhaled nitric oxide;FeNO)は気管支喘息の非侵襲的な気道炎症のマーカーである.アレルギー性鼻炎においても下気道にCD4+リンパ球や好酸球などの炎症細胞が浸潤するため,FeNOに影響を与えることがある.今回,われわれはより精度の高い検査結果を臨床に報告するために,スギ花粉の暴露がFeNOの解釈に影響を及ぼすか検討した.2015年9月から2016年4月の花粉非飛散時期と飛散時期に,健康成人14名,スギ花粉症患者33名を対象にFeNOを測定した.各種血液検査によるアレルギー素因の評価,TNSS (Total nasal symptom score)を用い鼻炎症状の評価も同時に行った.健常群のFeNOは花粉飛散期は17.1ppb,非飛散期は17.7ppbであった.一方,花粉症群では花粉飛散期で24.4ppb,花粉非飛散期で23.9ppbと,両期とも健常者と喘息患者を鑑別するカットオフ値(22ppb)以上であったが,季節変化は見られなかった.花粉症群のアレルゲン特異的IgE検査において,スギ花粉の陽性率は100%であり,対象者のうち97%がスギ以外の草木性アレルゲンにも陽性であった.FeNOは喫煙や好酸球性疾患などさまざまな交絡因子が存在する.花粉症患者におけるFeNOの季節性変化に関しては,交絡因子となりえる患者データを調整の上,より多くの患者における測定および解析が必要である.