抄録
黄土高原における大規模な水土保持対策事業に伴う人為的な土地利用形態の改変が黄河中流域の長期水収支(1960-2000)に与える影響を分布型水文モデル用いて解析した。長期的な地表面植生の変化が水収支に与える影響を評価するために、植生被覆率(VCR)という指標を導入し、様々な気候条件下で、VCRの変化に伴う水収支の変化について考察を行った。その結果、黄土高原では植生変化に伴う蒸発散量の増加量と河川流出量の減少量は、気候条件が乾燥していくに従って減少することがわかった。これは、土壌の乾燥に伴い、蒸発散量が大きく抑制されているためであると考えられた。