抄録
洪水氾濫に伴う水系感染症による健康被害は世界中で報告されており,特に発展途上国での被害は甚大である.バングラデシュの首都ダッカ市はその典型であり,毎年のように起こる氾濫により,水系感染症による健康被害は後を絶たない.そこで本研究は,ダッカ市において数値氾濫モデルによる下痢症感染リスクの評価手法の開発を目的としている.評価対象としたのは市内に点在する10箇所スラムで,それぞれの場所での氾濫解析結果とMollah(2007)により得られた疫学データを照らし合わせることで,評価手法の検討を行った.結果として,計算結果より得られた最高浸水深と罹患率,致死率に緩い相関が見られ,評価手法の妥当性が確かめられた.今後の課題としては,氾濫モデルの精度向上に加え,社会学的な要因を考慮することで下痢症感染リスク評価はさらなる精度向上が見込めることが考えられる.