水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会2012年度研究発表会
セッションID: P68
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気候変動・地球環境
極値降雨分布に着目した洪水被害予測
*手塚 翔也
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抄録

気候変動により集中豪雨の頻度,量ともに増加することが見込まれており,社会の関心が寄せられている.日本においても平成23年7月の新潟・福島豪雨のような異常多雨が頻発する可能性があり,豪雨に伴う洪水リスクの増加が危惧される.雨の増加に起因する洪水に対する適応策を考える上で,洪水氾濫による被害を定量的に評価することが重要である.洪水被害を定量的に評価した研究はなされているが,それらは全国一律に極値降雨を与えて氾濫計算を行っているため,洪水リスクを過大評価している可能性がある.本研究では,極値降雨の空間的分布に着目し,豪雨を起因とする洪水氾濫を定量的に評価する手法を提案した.全国の一級河川における100年確率流量を算出し,100年確率降雨,集水面積により流出係数を算出した.これを基に,日本全国の任意地点における集水面積と流出係数の関係を明らかにし,任意地点において最大確率流量を生じさせる降雨分布の解析を行った.この降雨分布を用いて氾濫計算を行い,洪水被害額を推算した.日本の治水整備水準を50年と仮定すると,結果として得られた再現期間100年の被害額は79兆円であり,水害統計被害額の約2倍である.100年確率降雨を全国に降らせた被害額と比較して,降雨分布を用いて算出した被害額は約34兆円小さくなった.また都市部において潜在的に大きな被害が生じることを示しており,本研究により得られた結果は日本全国における気候変動に対する適応策の政策決定に有用である.

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© 2012 水文・水資源学会
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