水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会2013年度研究発表会
セッションID: P59
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【気候変動・地球環境】
気候変動対策の必要性認識を促進するための情報提供方策の検討
*本間 基寛鈴木 靖佐藤 嘉展
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抄録
一般市民を対象とした気候変動対策としては,緩和策に対する啓発活動が盛んに行われているが,適応策に関しては一般市民への啓発に関しては必ずしも十分とは言えない.その原因として,自らが住まう地域に対する気候変動による具体的な影響のイメージが不足していることが考えられる.本研究では,富山県在住の一般市民を対象にインターネットアンケート調査を行い,一般利用者の気候変動に対するイメージを把握するとともに,気候変動対策の必要性を認識するための情報提供方策について検討を行った.
現在までに感じている富山県内での気候変化について,夏場の高温や短時間強雨,冬季の雪の減少を感じている人が多かった.また,富山県内で将来発生すると思われる気候変化については,現在までの気候変化と同様の現象が将来さらに発生すると思っている人が多いことがわかった.現在までの気候変化を感じている人ほど,将来にも気候の変化があると感じている傾向にあり,モニタリング結果等を一般市民に対して公開し,既に発生している気候変化に対する理解を促進することの重要性が示された.
10~20年後の気候変化によって富山県で生じると思われる具体的な影響について,高温化に伴う熱中症や農作物・水産物の変化,冬季レジャー機会の減少のほか,浸水被害の増加を懸念する人が多かった.一方で,渇水や冷害による農作物被害を懸念する人は少なかった.将来の気候変化予測について理解している人ほど,気候変化に伴う影響の発生を想起する傾向にあり,気候変化の具体的な影響のイメージの補強に,将来の気候変化予測の理解が有効であることが示された.
気候変化対策の必要性を認識するために必要な事項について分析を行った.緩和策実施の必要性に関しては,気候変化に対する全般のイメージができていれば感じることができること,富山で生じる気候変化の具体的影響の理解が必ずしも緩和策実施の必要性理解に繋がっていないことが示された.適応策実施の必要性認識に関しては,ダムなどの施設建設について,他の対策よりも必要性の認識がやや低かった.理由としては将来の渇水被害の発生可能性が低いと思われていることが考えられる.適応策実施の必要性を幅広く認識してもらうためには,現在発生していなくても将来発生する可能性がある気候変化についても説明をしっかり行っていくことが重要である.
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© 2013 水文・水資源学会
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