抄録
降水は熱帯低気圧や温帯低気圧など様々な降水システムによってもたらされる。気候変動に伴う降水量の分布の変化や統計的特性については多くの研究が行われてきたが、総降水量の変化が降水システムのどういった変化によるものであるかについてはあまり注意が払われてこなかった。一方、個々の降水システムについてはその発生頻度や強度の変化の推計が行われ、大気や海洋の大規模場の変化との関連の解析も進められている。将来の降水量の変化を、それをもたらす様々な降水システムの変化と結び付けて理解することができれば、ローカルな降水量の変化から大規模場の変化までプロセスの連鎖を一貫して遡り理解することにつながる。そこで本研究は気候モデルが予測する降水量の変化について、それがどのような降水システムのどのような変化によってもたらされるものかという視点で解析した。
影響範囲の広さや重要性の観点から熱帯低気圧、温帯低気圧、前線を降水の原因となる降水システムとして明示的に扱い、これらに含まれない降水システムによる降水を「その他」とした。降水システムは気候モデルが出力する6時間毎の大気場(気圧、気温、風速など)から客観検出手法を用いて検出した。検出した降水システムから一定範囲内で発生した降水をそれぞれの降水システムによる降水とした。
中高緯度の降水量変化は主に温帯低気圧の変化によるものであった。南インド洋などでは、熱帯低気圧による降水の変化の影響が比較的大きかった。ただし、モデル間の予測の一致度は高くなく、予測の不確実性が大きいことが示された。解析した地域のうち極域などを除く多くの地域において、熱帯低気圧および温帯低気圧に伴う降水の頻度変化は総降水量の減少方向に、強度変化は総降水量の増加方向に働いていた。